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MAC 症に対する漢方薬の効果
【短 報】
細胞内 Mycobacterium avium complex に対する clarithromycin と rifampicin の 抗菌活性に及ぼす根湯,補中益気湯および十全大補湯の影響
佐藤 勝昌・清水 利朗・佐野 千晶・冨岡 治明* 島根大学医学部微生物・免疫学教室
(平成 16 年 7 月 5 日受付・平成 16 年 7 月 23 日受理)

Mycobacterium avium complex (MAC)は isoniazid, ethambutol,pyrazinamide や rifampicin(RFP)などの抗 結核薬に対する耐性度が高く,近年開発された clarithromycin (CAM),azithromycin や rifabutin などと他の抗結 核薬との多剤併用による化学療法は MAC 症にかなり有 効であるとはいえ,いまだ菌陰性化には至らない症例や 再燃を繰り返す症例が多く治療に難渋しているのが現状 である1〜4)。また,現在抗 MAC 活性を有する薬剤が種々 開発されつつあるものの,臨床試験に供されているもの はほとんどない5)。したがって,MAC 感染症に対するよ り有効な化学療法を考えるうえでは,当分の間は既存の 抗菌薬による治療効果を免疫調節剤などのadjunctive agent で増強させるような形での治療レジメンの開発に 期待せざるを得ないように思われる5,6)。 このような免疫補助剤の candidate の 1 つとして漢方 薬が挙げられるが,先にわれわれは rifalazil(RLZ)による マクロファージ(M φ )内 MAC 菌の殺菌作用は漢方製剤 である麻黄附子細辛湯との併用によって有意に増強され ること,また実験的マウス MAC 感染症に対する RLZ と 麻黄附子細辛湯との併用投与によって,麻黄附子細辛湯 は RLZ の治療効果を有意に増強させることを見いだし ている7)。他方,別の漢方薬のヨクイニンにはそうした活 性は認められていない8)。ところで,麻黄附子細辛湯の他 に,宿主免疫能を亢進させる薬効を有する漢方薬として は,根湯,補中益気湯あるいは十全大補湯などが知られており,このうち,根湯は急性熱性疾患に用いられ る代表的な漢方薬で,特にかぜ症候群の初期症状に有効 であるとされており,その有効性は宿主免疫能の亢進に 基づくものと考えられている9)。また,補中益気湯および 十全大補湯は互いに類似した生薬を含有しており,古く から病後・術後あるいは慢性疾患などで全身倦怠感が著 しく,顔色不良や食欲不振などの症状がある場合の虚弱 体質の改善に有効とされ10),近年では,これらの漢方薬 には,各種細菌,真菌あるいはウイルス感染に対する宿 主抵抗性増強作用11〜17),さらには抗腫瘍効果なども報告 され10,18,19),免疫調節剤としての機能が注目されている。 今回は,上述の麻黄附子細辛湯について行った検討の 対象を根湯,補中益気湯および十全大補湯にも拡げ, これらの漢方薬の M φ 内 MAC 菌に対する CAMRFP の 抗菌活性発現に及ぼす効果について検討した。併せて, 結核菌や MAC による肺感染時には,感染菌が最初に接 触する宿主細胞としては肺胞 M φ のみならず肺胞上皮 細胞も重要であると考えられるので20),II 型肺胞上皮細 胞にMAC 菌を感染させた系についても同様な検討を 行った。 肺 MAC 症患者よりの分離株である MAC N-444 株(M. avium と同定済み)を 7H9 培地中,37℃で5 日間培養 し,遠心・洗浄後に 1% 牛血清アルブミン(BSA)含有リ ン酸緩衝生理食塩液に浮遊させた。次いで,超音波処理 によって均等菌浮遊液とした後に−80℃ に保存した。用時にこの菌液を溶解し,再度の超音波処理後に実験に供 試した。 American Type Culture Collection より入手したTHP1 ヒトマクロファージ株(THP-1 M φ )と A-549 ヒトII 型肺胞上皮細胞株(A-549 細胞)を 10% 牛胎児血清(FBS) 加 RPMI 1640 培地中で培養したものを供した。細胞内生 菌数の計測は以下のように行ったが,本実験系で得られ た値は細胞内菌数を反映したものであることが確かめら れている21)。 すなわち,THP-1 M φ については2,000 unitsmL recombinant ヒト IFNγ (Bender MedSystems,米国),100 nM calcitriol(和光純薬)および 1 ngmL LPS(E. coli 0111:B4()Difco Laboratories)含有 10% FBS-RPMI 1640 培地に浮遊させ,その 200 ? L (1×105 cellswell)を平底 96 ウエルへ加え, 5% CO2 下で 37℃, 2 日培養することに よって M φ へと分化させて供した。次いで,培養液を除 去した後に 2% FBS 加ハンクス氏液(HBSS)で細胞を洗 浄し,5% FBS-RPMI 1640 培地に浮遊させた供試菌の100? L (2×106 CFUwell)を加えた。3 時間培養後に 2%FBS-HBSS で非感染菌を洗浄・除去し,各濃度の漢方薬 (ツムラ)あるいは CAM(2.3 ? gmL()アボットジャパ ン)と RFP(6.2 ? gmL)(和光純薬)を含有する 5% FBSRPMI 1640 培地の 200 ? L を添加して 5 日間にわたって 培養した。なお,供試抗菌薬の培地中への添加濃度は臨 床投与量を投与した際の血中 Cmax 濃度とした。 A-549 細胞については, 5% FBS-RPMI 1640 培地に浮遊 させた 200 ? L(4×104 cellswell)を平底 96 ウエルへ加 え,5% CO2 下で 37℃,18 時間培養した。次いで,培養 液を除去した後に 2% FBS-HBSS で細胞を洗浄し,5% FBS-RPMI 1640 培地に浮遊させた供試菌の 100 ? L(8× 105 CFUwell)を加えた。4 時間培養後に 2% FBS-HBSS で非感染菌を洗浄・除去し,上述と同様に実験を行った。 いずれの細胞についても,所定日に 0.23% sodium dodecyl sulfate (SDS)の 80? L を各ウエルに加えて細胞を 溶解した後,これを 20% BSA (120 ? L)で混じることによ り SDS を中和させた。次いで,約 10 倍量の蒸留水にて 2 回遠心・洗浄した後に,蒸留水で 10 倍階段希釈を行 い,その 10 ? L を 7H11 寒天平板上にスポットし, 7 日培VOL.52NO.9 細胞内抗酸菌に対する抗菌薬と漢方薬の併用効果 487養後にコロニーをカウントすることにより細胞内菌数を 計測した。 Table 1 には,THP-1 M φ 内局在 MAC に対する CAM RFP の抗菌活性に及ぼす各漢方薬(根湯,補中益気湯, 十全大補湯)の添加効果について示した。Table 1 より明 かなように,CAMRFP 単独では M φ 内の MAC に対して 有意なレベルの殺菌能が認められたが,他方,いずれの 漢方薬ともそれら単独では M φ 内での MAC 菌の増殖を 阻害する傾向はみられなかった。さらに,各漢方薬を CAMRFP と併用した場合にも,CAMRFP による殺菌 能をさらに増強させるような効果は認められなかった。 これらのことは,今回供試した 3 種の漢方薬は,麻黄附 子細辛湯の場合7)とは異なり,単独または CAMRFP と の併用添加の系でも,MAC 菌の M φ 内での挙動には特に 影響を及ぼさないことを示している。しかしながら,別 の実験でペプトン誘導マウス腹腔細胞をこれら漢方薬で 3 日間処理した後,非付着細胞を洗浄・除去した後に得 られたマウス腹腔M φ に MAC を感染させ,その後 CAMRFP 存在下で培養したところ,漢方薬処理 M φ で は CAMRFP の MAC 殺菌能が増強されるといった現象 が認められている(論文作成中)。このことは,これら漢 方薬は M φ 自体にはその抗菌力を増強させるような活 性化作用は発揮し得ないものの,リンパ球の活性化を介 して M φ 殺菌能を up regulate するような免疫調節作用 を示し得るといった可能性を示している。このことから, in vivo でのMAC 感染に対するCAMRFP の治療効果 はこれらの漢方薬の併用投与によってある程度は増強さ れる可能性が考えられるが,この点については今後の検 討に待ちたい。 先にわれわれは,結核菌や MAC は生体内の II 型肺 胞上皮細胞内へ侵入し,そこを一時的な増殖の場にして いること,結核菌あるいは MAC 感染 II 型肺胞上皮細 胞は,TNFα と GM-CSF の産生増強を介して,M φ の抗 菌活性を up regulate し,さらに MCP-1 や IL-8 の産生増 強を介して,種々の炎症性細胞を感染局所へ集積させる ことにより,宿主感染抵抗性を亢進させていることを報 告した20)。Table 2 に示したように,先の THP-1 M φ にお ける場合と同様に,CAMRFP 単独では A-549 細胞内の MAC に対して有意なレベルの殺菌能が認められたが,他 方,根湯,補中益気湯や十全大補湯はいずれもそれら 単独では A-549 細胞内 MAC 菌の増殖を阻害するような 傾向はみられず,さらに各漢方薬を CAMRFP と併用し た場合,CAMRFP による殺菌能をさらに増強させるよ うな効果も認められなかった。しかしながら,これらの 漢方薬を生体へ投与した場合,II 型肺胞上皮細胞からの サイトカインなどの産生増強を介してM φ の抗菌活性 を亢進させる可能性が残っており,この点については今 後の検討に待ちたい。 以上の成績より,CAMRFP は供試細胞内の MAC に対して有意なレベルの殺菌作用を示すが,各漢方薬単独に はそのような殺菌作用のみならず増殖阻害作用も認め得 ないこと,また CAMRFP に各漢方薬を併用した場合で も CAMRFP の殺菌作用の増強は認められないことが わかった。このように,今回の成績は,漢方薬の中には 麻黄附子細辛湯のような M φ の抗 MAC 活性を直接増強 する薬効を有するものから7),そうした作用を示さない 根湯,補中益気湯,十全大補湯およびヨクイニン8)など さまざまであることを示唆しているが,今後さらに多く の漢方薬について検討を進める予定である。 謝辞 供試薬剤を分与いただいたアボットジャパン株式会社 ならびに株式会社ツムラに深謝します。 文献 1) Inderlied C B, Kemper C A, Bermudez L E: The Mycobacterium avium complex. 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調節剤によるHelicobacter pylori への直接作用及び 白血球への量的・質的影響。Bacter Adhere Biofilm 15: 139〜144, 2001 16) Abe S, Tansho S, Ishibashi H, et al: Protection of immunosuppressed mice from lethal Cndida infection by oral administration of a kampo medicine, Hochuekki-to. Immunopharmacol Immunotoxicol 21: 331〜 342, 1999 17) 木戸敏孝,石毛 敦,佐々木博:補中益気湯の免疫調 節作用とウイルス感染に対する効果。漢方と免疫・ア レルギー 15: 10〜20, 2001 18) 河野 寛,浅川真巳,牧 章,他:肝細胞癌発癌抑制 を目的とした十全大補湯によるKupffer 細胞の活性 化抑制と抗腫瘍免疫能活性化。Prog Med 23: 1556〜
1557, 2003 19) Utsuyama M, Seidlar H, Kitagawa M, et al: Immunological restoration and anti-tumor effect by Japanese herbal medicine in aged mice. Mech Aging Dev 122: 341〜352, 2001 20) Sato K, Tomioka H, Shimizu T, et al: Type II alveolar cells play roles in macrophage-mediated host innate resistance to pulmonary mycobacterial infections by producing proinflammatory cytokines. J Infect Dis 185: 1139〜1147, 2002 21) 佐藤勝昌,小笠原圭子,赤木竜也,他:マクロファー ジおよび II 型肺胞上皮細胞内の結核菌あるいはMycobacterium avium complex に対する各種薬剤の抗 菌効果。結核 74: 571〜577, 1999
Effects of the Chinese traditional medicines Kakkon-to, Hochu-ekki-to, and Juzen-taiho-to on the antimicrobial activity of clarithromycin in combination with rifampicin against Mycobacterium avium complex within THP-1 human macrophages and A-549 human type II alveolar epithelial cells
Katsumasa Sato, Toshiaki Shimizu, Chiaki Sano and Haruaki Tomioka
Department of Microbiology and Immunology, Shimane University School of Medicine, Izumo, Shimane, Japan
Since Mycobacterium avium complex(MAC)infections are very refractory, the development of new drugs with strong anti-MAC activity or therapeutic regimens using ordinary antimycobacterial drugs in combination with immunomodulators is urgently desired. In this study, we studied the effects of the Chinese traditional medicines Kakkon-to, Hochu-ekki-to, and Juzen-taiho-to, which exhibit immunopotentiating activity, on the antimicrobial activity of clarithromycin (CAM)in combination with rifampicin(RFP)against MAC organisms replicating within THP-1 human macrophage(M φ )and A-549 human type II alveolar epithelial cell lines. When MAC-infected cells were cultured for 5 days in a 5% FBS-RPMI 1640 medium in the presence or absence of CAMRFP at Cmax doses(CAM, 2.3 ? gmL; RFP, 6.2 ? gmL)with or without the Chinese herbal medicines at concentrations of 1 ? gmL to 100 ? gmL, CAMRFP significantly eliminated the intracellular organisms within THP-1 M φ s and A-549 cells. The Chinese traditional medicines, however, failed to inhibit intracellular bacterial growth. Moreover, these herbal medicines did not potentiate the activity of CAMRFP against intracellular MAC



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